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【書評】仕事に効く教養としての「世界史」

 

仕事に効く 教養としての「世界史」

仕事に効く 教養としての「世界史」

 

  「日本人ビジネスマンとして世界を相手にするには、世界史の歴史が大切」とのことで書かれた書籍。
 全体的に歴史エッセイとして読む分には軽くて読みやすいし、ひととおり、歴史を学んだあとで、整理も兼ねて、大まかな流れをつかむには良いと思う。
 ただ、述べられていることがどこまで学問的に正確かは少し疑問な点も。
 あくまでも著者の解釈として留めるのがベストと思われる。
 
 それでも「第9章 アメリカとフランスの特異性―人工国家と保守と革新」のアメリカへの洞察は興味深かった(あとはカトリック教はめずらしく『土地を持った』キリスト教で、それがイタリアをはじめとするヨーロッパの統合を妨げていたなど)。
 アメリカが歴史が浅い上に、土地への情愛等自然な感情ではなく、「理性」を崇めないと成り立たざるを得ない国家であること、結果「白黒」をはっきりさせたがり、イギリスがもちいている「グレー」さが乏しいこと、「大統領への尊敬」が大衆の「王室への敬意」につながっていること。
 なにより「そうかも」と思ったのは、アメリカの自然風土の特異性。どこへ行ってもそれなりに農業的に豊かで、鉱物資源が取れる。
 そもそもの発見はコロンブスだが、彼が疫病を持ち込んだため、先住民族はほぼ絶滅。なので、ピルグリムファーザーズが東に到着した頃にはそのような豊かな土地が、ほぼ手つかずであった。
 まずは東に到着したものたちは、一旗揚げようと頑張る。だが、そこで失敗しても更に豊かな土地が西に広がっている。2回目の土地で失敗しても、3回目、4回目のチャンスがある。この何度もリベンジを可能とする土地の特異性が、前述の「理性への信仰」とあいまって、今日の「アメリカンドリーム」の土壌になっているのではないか、という考察だった。
 
<感想>
 若干厳しめにいうと「素人っぽさ」をどこまで許容できるか?というのがこの本の評価の分かれ目のように感じる。
 もし、西洋人の内在倫理についてなら『コルプス・クリスティアヌム(corpus christianum = キリスト教共同体)』について言及している佐藤優氏の「はじめての宗教論 右巻~見えない世界の逆襲 」のほうがいいかなァ、と感じたり。
 「真剣に」というより「頭の体操」ぐらいで。